NEC子会社の元社員の証言
 11月7日の深夜、小川さんという方からメールが届いた 。「自分はNECの子会社、NECエンジニアリングの元社 員であった」と言うことでした。私がメールを返信した直後 、小川さんから電話があり、話によると、「現在本を出版す る為の準備をしており、自分が勤めていたNECエンジニア リングの詐欺と思われる内容もその中に掲載するつもりで、 すでに書き終わっている。」と言うのでした。

 私が、「私のHPの中でその文章を掲載しても良いでしょ うか?」と尋ねると、「お役に立てるのであれば、ぜひどう ぞ」と快く承諾して、再度のメールにその文章を添付してく ださいました。タイトルは「おかしな一流企業のお話し」で す。その中の「三、N電気タイマンブルース」に詐欺の実態 が書かれておりますが、その他の部分もぜひ読んでいただき たく、全て掲載しました。



おかしな一流企業のお話し(小川氏著)

一、 就職戦線異常あり!

 私が某工業大学の学生時代のことだから、今から約一〇年 ほど前の話になる。それは大学四年の春のこと。来春の就職 に向けてどこの研究室の学生も就職活動をはじめ出していた。

 当時は、一九九〇年のバブル経済崩壊の打撃を受け企業か らの就職募集人員が大幅に減少していたが、どこの企業も少 数の優秀な人材を確保するために『就職協定』なる企業間の お約束事をよそに、青田買いが盛んだった。

 そんな中で、F電機だけは就職活動を行う学生に対して、 バブル経済崩壊後とはとてもとても思えないような、異常な までの過激な接待をおこなっていた。

 私もその接待を受けた(というよりも、受けさせられた? )学生の一人であったことは言うまでもない。

 しかし、それには理由があった。卒業研究(論文)のため に所属していた研究室の担当助教授から「△△(埼玉の山奥) の××電機の工場に会社訪問するので全員出席すること!」 と指示(というか命令?)が出てしまったのだ。

××電機は埼玉の山奥に巨大な研究所や工場をもつ。

 私のような都会育ちの者にとって、埼玉の山奥に旅行に行 くならともかく、山奥にある企業に就職することなどとても 考えられないことであったが、研究生である私達学生にとっ て、研究室の権力者でもある助教授に対して意見をすると『 卒業』という学生生活最大のイベントを逃してしまい留年し なければいけないので、金魚の糞となって助教授のお供をし なければならなかったのだった…。

 さて当日。埼玉の山奥の△△駅まで到着したが、やはりそ こはド田舎であった。これから死ぬまで、二度と来ないであ ろうこの地の、しかも興味もない××電機の会社訪問がはじ まるのかと思うと鳥肌が立ち、熱が出そうであったが××電 機の送迎者に乗せられて工場まで連行されてしまった…。

 ××電機の工場に到着すると、会社概要や事業内容などの 説明がはじまったが、××電機に興味など無かった私は、そ んな説明は耳に入らず、悪友と共に女性社員の見定めに夢中 になっていた(結構、美人が多かった)。

 嫌々ながら、工場や研究施設を数時間周り、会社訪問の一 日が終わった。その後、××電機の用意してくれた旅館に行 った。

 入浴後、旅館の女将に案内されたのは大宴会場。そこには ビール、ウイスキー、ブランデーなどの酒と豪華な食事+レ ーザーカラオケが並んでいた。これらのモノが全てタダでい ただけるのだから、貧乏学生にはたまらないもてなしである 。
 この夜、助教授をはじめとした研究室御一行様がドンチャ ン騒ぎをしたことは言うまでもない…。
これくらいなら、当時はたまにある話で終わっていた。しか し、この後驚くべき過激な接待が待っていたのだった…。


 ◆助教授の頬にキスマーク発見!

 バカ騒ぎの宴会が終わり、部屋に戻ると女将が現れるなり 「女性をお呼びしましょうか?」
と言うのだ。同時に、研究室の学生が顔を見合わせて鼻の下 を伸ばしながらニタついた。あまりのうれしさに「山奥まで 来たかいがあった…」と思った瞬間、助教授が現れ
「早く寝ろ!」
と叱られてしまい、研究生達の楽しい夜は今いずこ〜になっ てしまったのであった。

 翌朝の朝食時、助教授はニタついてやけに機嫌が良かった 。昨晩の食事でもあたったのかと心配になり顔色を見た瞬間 、私は発見した…。
助教授の頬にキスマーク(口紅)がクッキリと付いているで はないか!
いつもしかめっ面している助教授の機嫌が良かった理由は、 そういうことだったようだ…。


 ◆タダほど怖いものはない!

 この数日後、研究生全員が助教授から呼ばれた。助教授の 顔は深刻そうだった。そして助教授から
「△△(埼玉の山奥)の××電機に研究室から一名就職して 欲しい…」
と言われた。
あれだけ飲み食いの過剰な接待を受けたのだから仕方のない ことであったが、研究生のほとんどの者が下を向いてしまっ ていた。「ジャンケンかあみだクジか…」と暗くなっている ところにイナカッペ学生のK君が登場した。
Kに事情を話すと
「オレが行く!オレが行く!オレが行く!」
とはしゃぎはじめた。「こいつは正気か?」と思い
「本当に行くの?」
と確認すると
「行く!行く!行く!」
とニコニコして答えてきたので、即、K君に決定したのだっ た。

 都会育ちの私がニヤケるくらいの豪華な食事が出たのだか ら、イナカッペ学生のK君にとってはホテルのディナーに匹 敵したことであろう。
おそらく単純細胞のイナカッペ学生のK君は
「××電機に就職すれば、毎日豪華な食事をタダで頂戴出来 る。それに助教授のいない今度こそ童貞を捨てるチャンス! 」
と勘違いして、自ら××電機を志望したに違いない…。

 あれから一〇年近くなるが、その後K君は童貞を捨て、埼 玉の山奥で元気に仕事をしているのだろうか…。今になると 少し心配だ。
 そういえば、私が就職活動をした年に織田裕二主演の「就 職戦線異常無なし!」という映画が上映されていたので見に 行ったことがあったが、それはあくまで映画の世界。

「真実は小説よりきなり」

あの頃の就職戦線はおおいに異常があった…。




二、 社員教育は社員の懺悔の場?

 前述した大学を無事卒業後、一部上場企業であるN電気の 関連会社に就職したのだが、大手企業の営業体制や管理体制 、また企業の表の顔と裏の顔のギャップには失望させられる ことが多かった。
それどころか、自分の主張が正論であっても会社組織の中で は正論で通用せずに悔しい思いをしたことも多かった。

 自分の出世のために自分の信念を曲げることは私には出来 なかった。今日の日本企業で役員に意見をすれば、それだけ でクビになりかねない。それを百も承知でやってしまった… 。


 ◆実に幼稚な『新入社員後期教育』!

 『新入社員後期教育』とは、就職して一年近くなる社員の ための教育のことで、社員が入社してからの一年を振り返り 反省をする場である。
内容的には、役員や幹部などのお偉いさんの講演後にテーマ が与えられ、社員が五名ほどのグループになって発表会のよ うなことを行う。

 このときの発表会のテーマは「私の自己革新」というもの だったが、テーマのわりにはその内容は実に程度が低く、く だらなかった。
社員の発言もくだらなければ、お偉いさんの発言もそれと同 レベルの実にくだらないものだった。

社員の反省内容は
 ・「休暇を取得し過ぎた」
 ・「フレックスタイムを使い過ぎた」
 ・「通勤中電車内で寝てしまった」

などと、社員のほとんどが同じようなことばかり発表してい た。はっきり言って、これが」「これでも一流企業の社員の 発言だろうか…」と首をかしげたくなるような内容ばかりで あった。
そして、お偉いさん方は統計を取っている訳でもないのに
 ・「休暇を取って何をしていたのか?」
 ・「何時に寝ているのか?」
 ・「何時に起きているのか?」
 ・「通勤電車の中で、なぜ業務に関する書物を読まないの か?」

などという質問ばかりであった。実に馬鹿馬鹿しい幼稚な内 容である。

 ここではっきりと言っておきたいことは『新入社員後期教 育』とは、入社後一年の己の「反省」をする場であって、お 偉いさんや会社に対して懺悔をする場ではないということだ 。
私は、業務に支障をきたさなければ
 ・一年で与えられた休暇をどんな理由で取得しようと
 ・何時に寝ようと起きようと

自由であり、統計をとっている訳でもないのにそんなプライ ベートなことまで会社に干渉されるいわれはないと思ってい た。
ましてや、通勤中など給料がつく訳でもないのだから通勤時 間に居眠りをしようが、マンガを読もうが、美人探しをしよ うが自由なこと!

 そんな訳で、社員とお偉いさんの言葉のキャッチボールを 聞いているとイライラして仕方がなかった。
そんなこんなで、私のグループの発表時間がきた。発表者は 何を隠そうあみだクジで当ってしまった私であった。私にグ ループの発表内容は他のグループの日常生活における反省と はちょっと違い、業務の遂行に対する反省を主としていた。
しかし、お偉いさんからは馬鹿の一つ覚えのように
「君、何時に寝てるの?」
と、他のグループに対してしていた質問内容と同じようなこ とを言われてしまった。
当時、私の家庭の事情により洗濯物が二人分あり会社から帰 って食事・洗濯・入浴・掃除、その他ゴミの準備をしたりす ると午前二時を回ってしまっていた。
「いつも二時頃です…」
「君、そんなに遅くまで仕事してるの?」
「いいえ、仕事は八時ころまでですが、家族が入院している もので…」
「入院?そんなこと関係ないでしょ!君みたいな社員が会社 をダメにするんだよねぇ〜」
と、S無線通信事業部長なる幹部は苦笑いしながら言ってき た。場内は笑いにつつまれたが、私自身はムカついてムカつ いて仕方がなかった。さらにS無線通信事業部長は
「君はエンジニアとして完璧か?エンジニアはプロだ!プロ は一〇〇パーセント完璧じゃなきゃならないんだぞ。君、ど うなんだね!」
と、怖〜い顔でエバってモノを言ってきた。S無線通信事業 部長のこのような言動と傲慢態度にブチキレてしまった。
「あのぉ、ちょっとよろしいでしょうか?」
「何だね!」
「エンジニアはプロで、プロは一〇〇パーセント完璧でなけ ればならないとおっしゃられましたが、一〇〇パーセント完 璧になるように努力は出来ても、一〇〇パーセント完璧は無 理なことだと思います。例えば、野球選手の王貞治は、バッ ターボックスにホームランを狙って入っても全部の打席でホ ームランを打てませんでしたよ。もちろん、王貞治はプロの 選手でしたけど…」
「君、その言いぐさは何だね!事業部長の私に意見するのか !」
と怒鳴られ、人材開発部担当部長からも
「君は何なんだね…」
と言われてしまった。

 言いたいことが相手に通じないのでは、同じ土俵のうえで 勝負するに値しないのでこれ以上討論しても無駄なこと。
しかも、こちらの意見に対して罵声を浴びせてくるようなノ ータリンなお偉いさんと討論しあったところで何の進展も望 めないと思い、これ以上意見をするのを止めたが、時すでに 遅し…。とうとう収拾がつかなくなってしまい『新入社員後 期教育』はお開きになってしまった。

 発表会が終わってから、「こりゃクビだな…」とうつむき ながら帰宅した。その途中公衆電話があったので所属部署に 電話をしN先輩に一部始終を説明すると
「はぁ〜、言っちゃったものは仕方ないでしょ…。詳しいこ とは明日会社で…」
と落胆した声で言われてしまい、「首でも吊ろうか?」と思 いながら電車に乗り帰宅した。

 翌日会社に行くと、上司に話しが回っていた。しかし、A 部長は
「心配しないで大丈夫だから、任せておきなさい…」
と肩を叩いて勇気付けてくれた。
その日の午後、A部長と共に本社に呼出され、A部長の後を 金魚の糞のようについて行った…。


一本気は楽な生き方?

 本社・総務部の応接室に入り待つこと数分、大魔人のよう な顔をしたN総務部長がガニ股で入ってきた。そして私の言 い分も聞かずに
「君が何をしたか判っているのか!一体何を考えているんだ !」
と頭ごなしに怒鳴りつけられたので、「この野郎!」と思っ て言い返そうと思ったが、私の気持ちをA部長が察して
「彼は一本気なところがあるもので…」
とフォローを入れてくれた。すると今度は
「一本気な男は楽な生き方なんだ!」
と、今にも脳溢血でイキそうな真っ赤な頭で(N総務部長は ハゲなので顔と頭の境がどこか判らなかった)怒鳴りつけら れた。さらに
「君が何をしたか判っているのか!」
と、今度はどこが頭だか判らない顔に青筋を立てて怒る、怒 る。
私も黙って頭を下げていればよかったのだが、N総務部長の 一方的な言動に腹が立ったので我慢できずに言ってやった。
「A部長、どうしても言いたいことがあるのですが…」
「言ってみなさい」
「N総務部長さん、今『一本気な生き方は楽な生き方だ』と 言われましたよね?私の 父親は一本気な生き方をしていま すが、それなりに苦労して生きていますよ。私の尊敬する父 親のことをこ馬鹿にされているようで、N総務部長さんの発 言には納得できませんので取り消して下さい。N総務部長さ んのお知り合いの一本気な生き方をしたいる方が、たまたま 楽な生き方をしていたのではないですか?」
と、またまた余計なことを言ってしまった。その後しばらく 沈黙が続き女性社員が
「失礼します。お茶です…」
と言って応接室に入ってきたが、N総務部長は
「イラン!」
と、会話とは関係のない国名を残して応接室を出て行ってし まった。すかさず
「A部長!スミマセン!」
と頭を下げて謝った。A部長は
「いいんだよ、気にするな…」
と言ってくれたが、A部長もさすがに参っていたように見え た。

 数分後、N総務部長がガニ股で再び現れた。
「さっきの(一本気は楽な行き方)発言は撤回する!」
「私も、失礼を申し上げた無線通信事業部長さんに謝罪した いのですが…」
「改めて連絡するので、今日は帰っていい…」
と、まあこんな感じで本社をあとにした。

 この帰り、A部長さんにご馳走になった一杯の味は今でも 忘れられない…。


 ◆『忍』者は救われる!

 本社に行った翌日、私が失礼を申し上げた(とは、本当は 思っていないが)S無線通信事業部長にA部長同伴で謝罪を しに行くことになった。
所属部署を出ようとしたとき、私のアドバイザーであるN先 輩が
「これ…」
と言って小さく折ったメモをくれた。このメモには『忍』と 、N先輩独特のカクばったへたくそな字で書いてあった。
そういえば、新入社員教育の数ヶ月前の私の誕生日に父から 貰った手紙にも『忍』と一文字だけ書いてあったことを思い 出した。
今考えれば、確かに『忍』というものが私には足りなかった ような気がする。

 話しは戻るが、そんな訳でN先輩から貰ったメモを上着の ポケットにしまい、A部長と共にS無線通信事業部長のとこ ろまで謝罪をしに行った。
 事業部長室に入るとすぐに
「社員教育で失礼を申し上げて、申し訳ございませんでした …」
と言って頭を下げた。すると、S無線通信事業部長は
「謝ってくれればそれでいいんだ。だけどね、『君みたいな 社員を放っておいていいのか!』という社員が多数いるんだ よ。君はどう責任とるのかね?」
と、「辞表を出せ」といわんばかりの言い方をしてきた。
「うそつけ!だったら、その社員の署名でも持って来い!そ うしたら辞めてやるよ!」と言ってやりたがったが、『忍』 んだ!とN先輩から貰ったメモを握りしめて我慢した。

 S無線通信事業部長は、その後も言いたい放題言ってくる ので、あんまりムカついて三言くらい言い返しそうで危なか ったが、A部長がうまく納めてくれた。
所属部署に戻る途中、A部長は何一つ私のことを責めてこな かった。それどころか
落ち込んで無口になっていた私に
「腹減っただろう…」
と言って、駅前でうな重をご馳走してくれた。

 会社組織では、「部長」よりも「事業部長」の方が役職で いったら上かもしれない。しかし、S無線通信事業部長より もA部長の方が人間性でいったら遥かに上であると感じた。
このとき、「A部長が定年か移動になるまでA部長の下で一 生懸命働こう…」と思ったのだが…。


 このトラブルの結末は…
捨て身になって私をかばってくれたA部長のお陰で、私は会 社から「懲戒(口頭注意とする)」という寛大な処分を受け た。
笑ってしまうのは、『新入社員後期教育』に参加していたS 無線通信事業部長を含めた役員や幹部などのお偉いさん達も 「指導に適切を欠いた」という理由で「懲戒」の対象になっ たことだ。

 遠山の金さんのようなお見事な裁きを誰が出したか判らぬ が、お偉いさん達にもそれなりに問題があったと勝手に解釈 させてもらった次第。

 そして翌年の新入社員教育からお偉いさん達のくだらない 質問は無くなったとのこと。
自分が犠牲になることを恐れていたら、物事は前向きになら ない。これこそまさに、「革新」だ!

 私のためにクビを覚悟して謝罪に回ってくれたA部長の姿 を見て、上に立つ者の器量というものを学んだ。
 自分の出世のために、自分の利益になることしか考えない 大人が増えつつあるこの時代には、A部長のような上司と二 度と出会えないであろうと思った。




三、N電気タイマンブルース

 大手電機メーカーT社製のビデオデッキの不具合を巡り、 福岡県内のユーザが修理を依頼したところT社担当者(警察 からの天下りだった)から不誠実な対応をされたうえに暴言 を吐かれたとして、このユーザがインターネットのホームペ ージ上でT社の不誠実な対応の経過説明だけでなく録音した 暴言を音声でも公開した。
ホームページ開設約一ヶ月で数百万件を越すアクセスがあっ たとのこと。個人がインターネットを使って大企業に反撃し 、社会問題にまで発展させたのだからたいしたものである。

 当初、T社は事実を一部認めユーザに対して謝罪の気持ち があることを新聞紙面上でも明らかにしていた。
しかし、数日後、T社の世論(ユーザを含)に対する反撃が はじまった。T社は
「ユーザの都合の良いことばかりだ!」
として、裁判所に対して『インターネット上からの排除勧告 の申立て』を行った。

 T社というよりも、大手企業の往生際の悪さが目立った事 案であった。
 この手の交渉でやり方を間違えれば、脅迫・恐喝・業務妨 害などで警察が動き出していたはず。警察が動く前に世論を 動かしたのだから「お見事」の一言!
 現時点では定かではないが、おそらくT社に暴言を吐かれ たユーザの主張が正しいと思う。

なぜか…・

 ◆不具合という名の設計ミス『バグ』!

 実は、カーナビやパソコンなどの電機製品の不具合という のは良くある話しである。N電気グループの中核的技術集団 で仕事をしていた私が言うのだから間違いない。

 電気製品の不具合にもいろいろと種類がある。

例えば
 ・部品の初期不良による不具合
 ・ソフト(プログラム)設計上の不具合
 ・ハード(電気回路)設計上の不具合
 ・ソフトとハードの競合による不具合

などがある。
 業界では設計ミスのことを通称『バグ』と呼んでいるが、 ちょっと耳障りの良い日本語にすると『不具合』となる。

 この業界では
「客先では『バグ』とは言わず、『不具合』と説明しろ!」
なんて教育されるほど『バグ』という呼び名は社外ではタブ ーとされている。
ちなみに製品の不具合を発見し、設計部門の技術(開発)者 に
「この故障は『バグ』が原因ではないか?」
などと指摘すると、技術者は妙にプライドが高いので、露骨 にイヤな顔をされるばかりか、素直に『バグ』と認めようと しない。そして、調査もしないで
「使用上の問題やデータの設定ミスではないか?」
と開口一番言ってくる。ソフトウェア開発部門は
「ハードウェアの問題でしょう…」
と言い、ハードウェア開発部門は
「ソフトウェアの問題でしょう…」

と、何の根拠もないのに他の技術部門のせいにしようとして 誠実に対応しないばかりか、各技術部門をたらい回しにする のだから始末に終えない。

 私は、製品出荷後のフィールド(保守)業務及びお客様( 故障電話)対応を担当していた。各種故障やトラブルが発生 すると、デバックマシンと呼ばれる実機で再現試験や評価な どを行い、その原因が設計に絡むと切分け(判断)されたと きには技術部門と折衝したりもしていた。こちらにしてみれ ば、試験や評価を行った結果を基にそれらを裏付けとして技 術部門に対して改善要求などをしているにも関わらず、技術 部門担当者に不誠実な対応を取られることが多かった。その 都度責任者などを怒鳴りつけたりして重たい腰を持ち上げさ せて改善させてたこともあった。

 ◆なぜ『バグ』(不具合)が発生するのか?

 メーカーでは、まず製品の企画を出しそれらに基づいて各 種設計部門が製品の開発を行うのだが、その開発時間(期間 )がやたらと短いのだ。
時間的な余裕がないと、製品に対する満足な設計や完璧な評 価などが出来るはずがなく、人間が造る以上ミスがつきもの である訳だから、一〇〇パーセント完璧な製品など到底無理 なことなのだ。

 私は、N電気製品の電話交換機に関する故障対応(フィー ルド)を担当していたのだが、毎日の問合せが半端じゃなか った。
そのうち三割くらいが『バグ』による故障(ただし、発売開 始一年未満の新製品や新しいバージョンのソフトの『バグ』 による故障は約五割)と言っても過言ではない。
電話交換機のバグによる故障の例をほんの一部紹介しておく 。
【部品の不具合】
・基盤内の部品から出火して交換機が燃えた
 ・故障警告メッセージが多発して交換機が不動になる。
【回路の不具合】
 ・電話機のメモリに登録した短縮ダイヤルが消える
 ・通話中ノイズが発生して会話が出来ない
 ・電話機の着信音が鳴らない
【プログラムの不具合】
 ・正確な課金情報が出力されない
 ・通話中の回線が切断される
 ・(ホテルなどで)設定した時間にモーニングコールが鳴 らない。

 これらの故障は全て『バグ』によるものである。これ以上 故障の例を記載するとN電気の信用問題に関わるので止めて おくが、他にも山ほどあることは確かである…。

 ◆『バグ』でも修理代は有償!?

 メーカーでは、『バグ』が原因で様々な故障が発生するこ とが認識出来ていても、重大な故障が起きない限りそれらを 自主的に改修することは滅多にない。
「お客から故障の申告がくるまで放っておけ!」
というのが会社の方針だからだ。
それどころか、『バグ』による故障であっても
「お客には部品の偶発故障と報告し修理費用を請求しろ!」
と、管理職が担当者にこういうとんでもない指示を出してく るのだからオッタマゲテしまう。

 私はこれらの行為が一流企業の技術集団として「おかしい 」と疑問を抱いたある日、上司ではあるがとても尊敬出来な い二枚舌のN課長(現在大阪の方で部長とかいう役職らしい )に対して疑問を投げかけた。
「不具合が見つかったらお客からクレームがくる前に、メー カーとして自主的に無償で改修すべきではないのか?お客に 対する信用問題にも関係してくるのではないか…」
「そんなことをやっていたら会社は潰れてしまう。客に嘘が バレないようにして客から金を絞り取るんだ!どこのメーカ ーだってそうやって存続しているんだ!」
と、言い訳としては無理がある、子供じみたことを言われた ことがあった。これは、子供達を叱ったときに
「だれだれ君もやっているもん!」
という言い訳とある種似たようなものがある。

 これが大手企業で役職を持っている人間の言い分なのだか ら、お客からの信用を壊さないように日々努力しているペー ペーの社員はやってられないのである。

 そう言えば、電話交換機のあまりの故障の多さに、品川駅 前の某有名ホテル役員や中部地方の国立大学幹部から
「うちに入れた交換機は、オマエの会社の評価マシンか!N 電気社長に電話を入れてやるぞ!」
などという、半分脅迫めいた激怒の電話が、N電気営業担当 者宛に入ったという話を聞いたことがある。

 こういうコワーイお客やコうるさいお客には、故障の原因 がバグであってもなくても、また保証期間を過ぎていても無 償で修理をし、おとなしいお客や無知なお客には『バグ』で あっても「部品の偶発故障」と称して修理費用を請求してし まうのだからマッタクふざけた話しである。

 あれ〜?これって犯罪ですよね?『バグ』なのに「部品の 偶発故障」と偽って修理費を請求する行為は
刑法二五〇条【詐欺(未遂)】
修理費を受取れば
刑法二四六条【詐欺】
に該当するんじゃないんですかねェ〜…。

 N電気さん。知らない、やっていない、嘘だ!と言って名 誉毀損罪などで訴訟問題に発展させますか?それとも詐欺ま がいの行為をこれからも続けていきますか?
お天とう様は見ていますよ…。

 もっとも、N電気と言えば国(防衛庁)に対して水増し請 求などをしていた企業なのだから、民間企業や一般ユーザに 対して詐欺のような行為を働くことなど朝飯前のことであろ う。

 こういうやり口でしか金儲け出来ない悪徳企業は重罪に処 するべし!

 ◆管理職の妬み!

 前述したように、金儲けのためならば手段を選ばない行為 や、管理職のそんな仕事っぷりを見ていれば、下っ端社員は そりゃ偉大?なる人間に成長するであろう。
お偉いさん達は、社員教育の場などでたいそう立派なことを 偉そうに言われるが、職場では部下に対してとんでもない指 示を平然と出しているのだから、まったく困ったものだ。
(こういう状況なので、前述した社員教育の場でお偉いさん から言われるごもっともな話しは、私にとっては与太話しに しか過ぎなかったのだ…)

 そう言えば、この会社を辞めた理由は、大人げ(で?)な いチビのH部長との口論がはじまりであった。
もっとも、口論の原因をつくったのは、UFOキャッチャー で獲ったぬいぐるみを女性社員にばらまき求婚しているイヤ ミなW主任(現在、東京で課長とかいう役職らしい)だった が…。

 ある朝の回覧に
「この内容に心あたりのある担当者はHまで…」
と、H部長直筆で書いてあった。この内容とは
「大型(大容量)交換機のトラブルなのに、小型(小容量) 交換機の担当者に問合せの電話をふり、お客をたらい回しに した者がいる」
という、小型機種担当のW主任が書いた週報(一週間の職務 遂行報告書)の一部を指していた。
「どうしようもない奴がいるもんだ…」と思いながらユーザ 名を見ると、悪者扱いされているのは私ではないか!

 私はお客をたらい回しにしていなかった。W主任にお伺い をたてたうえで
「こちらで対応するから…」
と引き受けてくれたから任せたのだ!
W主任は、こういうイヤミな性格(ドラエもんのスネオそっ つくり!)なので、未だに結婚出来ないらしい…。

 そんな訳で、回覧を見てすぐに腹が立ち、H部長のところ に事情を説明しに行った。
「あのォ、H部長Wさんが書いた週報のことなんですが…」
「忙しいから、明日聞く…」
と、新聞を読みながら流されてしまった。これでは腹の虫が 納まらない。H部長の机の前でボケッとしているW主任に
「Wさん、こういう書き方はないでしょ?Wさんが『こっち で』と言ってくれたので任せたんじゃないですか!」
と、文句を言ってやると
「はいはい、私が悪うございましたぁ〜」
と、人をおちょくるような言い方をしてきた。そこに「忙し い」と言って新聞を読んでいたH部長が
「テメエ!明日聞くって言ったろうに!」
と、こともあろうか管理職のH部長が、カッカッしている部 下を宥めるどころかあおってくるのだから始末に終えない… 。ブチ切れて
「やってられっか!今日で辞めるから辞職願い(会社所定の 書式がある)持って来い!」
と言ってやった。
辞職願いが総務部から届く間、製品のトラブルのことでしょ っちゅう喧嘩していた技術部門のお偉いさん方に挨拶の電話 を入れた。
「今日で、会社を辞めることになりました。いろいろとお世 話になりました…」
「えっ?いつから辞めることになっていたの?」
「はい、今日、今さっきです!」
「はぁ〜?」
お偉いさん方はみんな驚いた様子だった。それもそのはず。 技術部門と喧嘩はするが、全て仕事に関することであり、そ れだけいつも私が仕事に対して情熱的であることをまわりは 認めてくれていたからだった…。

 数十分後、総務部から辞職願いが届いたので必要事項を記 入した後、H部長に投げつけて大学卒業後四年間勤めた会社 に別れを告げた。

 会社にしてみれば、私のような問題児は一日も早く消えて 欲しかったに違いない。辞表はその日のうちに会社に受理さ れ、二度とこの会社に足を踏み入れることはなかった。

 そして、私の退職後二ヶ月くらいの間に同じ(大容量交換 機の)グループで仲の良かったY先輩と後輩のM君が私を後 追いするようにこの会社を去って行った…。
Y先輩は、私の再就職先にいつのまにか入社していた。後輩 のM君からも
「ぜひ、同じ会社で働きたい…」
と、連絡が入ったことがあった。

 そう言えば、Y先輩・後輩のM君が会社を辞めてから、N 課長から連絡が入り
「オマエ、YさんやM君を誘惑してうちの会社を辞めさせた だろう!」
と、言いがかりとも受取りかねない事実にないことを言われ 「オレは女ならまだしも、男なんて誘惑しねえよ!」と心の 中で叫び笑ってしまった…。

 仮に、H部長やN課長が退職して他の会社に転職すること になったとしよう。
「私も連れて行って!」
と、賛同する部下が何人いるのだろうか?おそらくいないで あろう。いや、絶対にいないはずだ!いたとしても
「あなたに付いて行ったらいくらくれます?」
と言われてしまうのがオチである。

 H部長やN課長が誤解されているようなのでこの機会に釈 明しておくが、Yさん・M君に対して私が空気を吹き込んだ 事実などない。あなた達に部下に慕われる上司としての器量 がなかったことをいいことに私を妬み、私を誹謗・中傷する ことは止めてもらいたい…。

 ◆ホテルの電話料金はボッタクリ!

 会社は強気で
「雇ってやっているんだ!」
とえばり腐り、社員は弱気で
「雇われの身だから…」
と言う。
私はいつも「雇われてやってるんだ!」という気持ちで仕事 をしていた。

 ある日、名古屋の方まで深夜の(バグ)改修作業に行くこ とになったのだが、周辺のホテルの予約がとれなかったので 自分の車ではるばる名古屋まで出張したことがあった。

 そして出張先から戻ったときN課長からこんなひどいこと を言われたことがある。
「オメエ!車なんかで出張に行きやがって!費用の請求なん てしたってそんなもん認めん!泊まるホテルがなかったら始 発まで駅でボール紙でも敷いて寝りゃいいだろうに!」
私が、ホテルの予約がとれなかったことや作業が深夜である ことなどの事情を説明しているにも関わらず、その事情が判 ってもらえないのだから困ったものだ。上司だったら総務と 交渉してみてそれでも費用が出なかったらポケットマネーで 出してくれりゃいいのに!と思った。ちなみに私はこんな会 社のために在職中数十万円の身銭を切っている…。

 私をこじきにしようとしたN課長に退職後何年かして電話 したときのこと。
「ホテルの課金でいい加減でしたよね…」
と言うと
「知ってると思うけど、あれはホテル側の要望もあってさ… 」
と、得意の二枚舌で丸め込まれそうになったことがあったが 、ホテルの課金料金は実にいい加減であった。
N課長が言うように「ホテル側の要望…」うんぬんはとかく として、ホテルに宿泊して部屋備え付けの電話を使用したと きに請求される電話料金は、実際に使用した正規の料金より も割高なことが多い。

 ホテルの電話料金の課金は、ホテル内に設置してある課金 コンピュータシステムのプログラムデータの設定により、お 客に対してボッタクリの請求が出来るのだから怖い、怖い!
さらに、課金システムのプログラムのバグ(不具合)により 、実際には数十円の料金なのに一〇〇万円近い料金が請求さ れた宿泊客からホテルやメーカに対してクレームが入ったこ とがあった。
課金システムのからくりについては詳細を避けるが、私はホ テルの課金システムの裏事情を知り尽くしているので、ホテ ルに宿泊して部屋備え付けの電話を使ったことは、N電気グ ループ会社に就職して以来一度もない…。

 「企業倫理の確立」を声高々と叫んでおきながら、影では 善良なユーザを騙すようなことばかりしているN電気の実態 を目にし過ぎたせいか、N電気の「防衛庁に対する水増し請 求事件」をマスコミが大きく取り上げても何一つ驚くことな どなかった…。

 それにしても、前述した社員教育現場のお偉いさんの発言 と言い、管理職の連中の言動と言い、まったくどうしようも なかった。そして会社の労働組合や総務部の連中なども世間 知らずでどうにもならなかった…。




四、労働組合は会社の味方!?

 大手企業の労働組合は力があると言われるが、N電気の労 働組合は会社側と密接な関係にあるのだから困ったもの!会 社側と労働組合は、「もちつもたれつ、お手手つないで仲良 しこよし♪」ってな感じなのだ。

 労働組合の幹部連中は、労働関係の法律などに対する勉強 心が無に等しい。したがって、無知。

 私が在籍していたN電気グループ会社の労働組合なんか、 主任以下の社員から「労働組合費」などという名の金をとっ て労働組合幹部の給料にしているのだから馬鹿げている。
しかも、労働組合費は一ヶ月二五〇〇円。これは残業二時間 分に相当する。
そうじゃなくても少ない給料から所得税だの社会保険料だの と引かれて手取額が少なくなるのに、そこから毎月二五〇〇 円も引かれるのだから下っ端社員はタマラナイ!

 誰が何のために決めたか判らないが、労働協約というお約 束事により新入社員は入社後四ヶ月の試用期間が過ぎると自 動(強制?)的に無条件で労働組合員にされてしまう。
「オレはイヤだ!」
なんてもがいてもどうにもならない。
「イヤだったら会社を辞めろ…」
ということらしい。


 ◆労働組合は反国家的政党がお好き?

 組合員になったある日、組合の回覧を見ると「?」なこと ばかり書かれているではないか!学生時代から民族(国家護 持)運動を展開していたちょっぴりオチャメな私は、労働組 合の執行委員長宛に次のような質問状を送りつけてやった。


                                 

 私は、K執行委員長の回答に期待していたのだが、質問状 提出一ヶ月後に私を尋ねてきたのはH副委員長であった。し かも、私がK執行委員長に送りつけた質問状の紙っぺらを一 枚だけ持ってやって来て
「あのォー、書いてあることがよく判らないのですが…」
と言うのだ。
「Hさん、あなたに質問した訳じゃないですよ!」
「K執行委員長から頼まれて来たのですが、何をどうやって 説明すれば良いか判らないんです…」
「Hさんは(労働)組合に関心ありますか?」
「それが…ないんです…」
「でも、労働三法くらいは知っていますよね?」
「はっ?何ですかそれ?」
労働組合の副委員長ともあろうお方がこんな調子なので疲れ てしまい
「K執行委員長本人が面談に来るか、質問に対する回答を文 書で送って下さい…」
と言って、H副委員長と別れたのだが、私が組合に在籍して いた約四年のあいだにK執行委員長が面談に来ることもなく 、質問状に対する回答も届くことがなかった…。
 
 しかし、私の退職後、総務部とのちょっとしたトラブルが 原因で労働組合のK元執行委員長が私の家まで尋ねて来たの だが…。


 ◆労働組合元執行委員長の『変節』ぶり!

 そのトラブルというのは、雇用保険を完備した会社を退職 したときに受取りハローワーク(職業安定所)に提出する『 (雇用保険被保険者)離職票』に関する件であった。

 私が会社を辞めるのが突然のことだったため、会社側が退 職時までに準備する書類が当日間に合わなかったことから数 週間後それらの書類が郵送されてきた。
その中に同封されていた『離職票』なる重要書類に、会社側 が記入すべき必要事項(離職前六ヶ月の平均給与など)が未 記入(白紙)のままメモ書きがついていた。そのメモには
「あなたの署名と印鑑を押して総務部担当者Nまでに返送す るように」
と書いてあった。
しかし、『離職票』をよく見ると、署名・捺印欄に「上記内 容に間違いありません」と書いてあるではないか!

 会社側が記入すべき必要事項が何も記入されていない紙っ ぺらに「署名・捺印をして返送しろ」というのは非常識だと 思い、総務部担当者Nに問合せの電話を入れた。すると
「みんな今まで文句を言わず署名・捺印してくれた…。何で あなたはこちらの言うことに素直に従ってくれないのか?」
と言われ、むかついたので
「あなたが何て言われようと、私は白紙に署名・捺印出来ま せん!」
と言い返してやった。すると
「あなたが雇用保険金を貰えないだけだから別に構いません よ!」
と開き直ってきた。そこで
「そちらの会社では、手形を振り出すときに金額や日付等を 入れないで社印を押して取引先に渡すのですか?」
と、トドメを刺すような質問をすると
「そんなことする訳ないじゃないですか!
」 と応えてきた。
「ですよね!だったら私も必要事項が記入されていない書類 に署名・捺印することなど出来ませんよ!」
と、強い口調で言ってやったら、こともあろうか「ガチャン 」と一方的に電話を切られた。

 担当者Nのこのような無礼な態度に腹が立ち、ハローワー クに電話をし事の一部始終を話したところ
「会社の指示に従わないあなたが悪いんでしょ…」
などと言われてしまった。これまた腹が立ち、今度は東京都 庁の職業安定所担当セクションに電話をして、ハローワーク から言われた事と会社(総務部担当者N)の言動などについ て説明すると
「あなたの主張が正しいです…。こちらからハローワークと 会社に連絡をしまして厳重に注意しておきます。また、今後 このようなことが無いように会社に対して行政指導いたしま す!」
と言われた。「会社に対して行政指導?、?、?」と思った が、退職した会社がどうなろうと知った事ではなかったので 「まっ、いいか!」と微笑んでしまった。
この数日後、私の自宅に会社側の必要事項をきちんと記入し た『離職票』を持って来たのは、総務部の部長か課長か忘れ たが以前質問状を送りつけてやった労働組合(元)執行委員 長のK氏だった。

 話しは前後するが、会社に辞表を叩きつけてやった後に
「何であいつを辞めさせたんだ?会社に連れ戻せ!」
と、技術部門の管理職の方々が私の上司の(であった!)H 部長やN課長に対して激怒したらしいのだ。慌てたH部長や N課長が総務部と掛け合ったらしいのだが
「辞表を受理した以上、どうにもならない」
と、総務部から言われたらしいという噂を聞いていたので、 この話しが事実かどうか総務部K氏に対して確認したところ
「確かにそういったことがありました。しかし、会社として は前例をつくる訳にはいかず、辞表を受理してしまった以上 復職は無理なんですよね〜」
とこたえてきた。
日夜労働者の人権を声高々と訴え、下っ端社員の味方であっ た労働組合の元執行委員長の口から「会社側として…」とい う、いつのまにか会社側の人間になってしまっているセリフ を聞いて驚いてしまった。
労働組合は「日の丸掲揚反対」をスローガンとしている政党 を支援し、会社は社の屋上に日の丸掲揚している…。と言う 事は、K氏の思想は一八〇度変わってしまっているのだ。こ れを『変節』と言わず、何と言うのだろう。K氏は
「私は、労働組合の執行委員長などやりたくなかったが、会 社側からの依頼で仕方なく就任した…会社の依頼を断れば出 世出来ないですからね…」
とも言っていた。理解出来ない…。
己の出世のためであれば思想をも簡単に転換出来るその変節 ぶりを知り、こいつは所詮会社の犬にしか過ぎなかったのだ なと思った…。

 今考えれば、こういう人物に質問状を送ったのだから、回 答を期待していた私が馬鹿だったのかもしれない。

 N電気の労働組合は「電気連合」という名の労働組合の連 合組織に加盟していた。「電気連合」の前身は「電気労連」 である。
「電気労連」は極左暴力系派閥である革共同前身派や共労党 系に属し、これらの派閥の中でも勢力の強い主要労働組合で あった。そしてこれらの派閥は、過激分子集団『反戦青年委 員会』に属し、街頭の暴力闘争が特色の過激な活動を展開し ていた。
『反戦青年委員会』は当初社会党を母体として育ってきたが 、NHK職場占拠や東大闘争(約六〇〇名動員)など、その 過激な活動には社会党も手を焼いたというエピソードがある ほど、かつての組合幹部は左翼系一筋の思想だったのだ。時 代が変われば労働組合も変貌するのは判るが、かつての労働 組合の勢いは「いまいずこ〜」である。

 ちなみにN電気(関連会社を含)では、労働組合幹部を経 験した者が総務部の部長や課長などの管理職に就任すること が多い。ハゲのN部長にK氏も労働組合の幹部あがりであっ た。これらを知れば、N電気の労働組合と会社側は馴れ合い であることが判るであろう。

 N電気の場合、労働組合と会社は互角なのではなく、労働 組合は会社のマリオネットにしか過ぎなかった…。


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