東京高等裁判所判決文
平成八年(ネ)第三三五四号売買代金請求控訴事件(原審・長野地方裁判所平成三年(ワ)第一八三号)

                判             決

長野市大字安茂里二一六九番地一
      控   訴   人             株 式 会 社 東 亜 シ ス テ ム
      右代表者代表取締役              吉       岡       一       栄
      右訴訟代理人弁護士              伊    藤       亮       介
      同                 森    崎       博       之
      同                 岡    田       英       之
      同                 吉    野       正    己
      同                 高    原       達       広
      同                 大    門       嗣       二

東京都目黒区青葉台三丁目二一番八号 
   被控訴人(中部エヌイーシー商品販売株式会社訴訟承継人)
                 エヌイーシーパーソナルシステム株式会社
    右代表者代表取締役          的   井    聖    士 
    右訴訟代理人弁護士           岡      田                 宰
      同                           戸      塚                 晃


           主         文
  一  本件控訴を棄却する。
  二  控訴費用は、控訴人の負担とする。

           事         実
第一  当事者の求めた裁判
  一  控訴人
 1 原判決を取り消す。
 2 
(一)	主位的申立て

 被控訴人は、控訴人に対し、金一億五三七五万〇八四九円及び内金四三二八万八三〇四円に対する平成三年九月一日から、内金九五五五万四六五五円に対する同年一〇月一日 から、内金一四九〇万七八九〇円に対する同年一一月一日から、それぞれ支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
(二)  予備的申立て

 被控訴人は、控訴人に対し、金一億円及び内金四三二八万八三〇四円に対する平成三年九月一日から、内金五六七一万一六九六円に対する同年一〇月一日から、それぞれ支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
 3 訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。
 4  仮執行宣言
 二  被控訴人
   控訴棄却申立て

第二  当事者双方の主張
 当事者双方の主張は、次のとおり当審における当事者双方の主張を付加するほかは、原判決書三貢五行目から一六貢一一行目までと同一であるから、これを引用する(ただし、原判決書一五貢三行目の「甲第二九号証」を「甲第三〇号証」に改める。)。  一 控訴人の予備的申立てにかかる請求原因(不当利得) 1 訴外丸山は、平成三年六月から八月にかけて控訴人から仕入れたパソコンに関しては、代金を全く控訴人に支払うことなく、商品受領後これを直ちにいわゆる現金問屋(バッタ屋)に販売し、その代金の一部を中部エヌイーシーの商品の販売代金として被控訴人の口座(八十二銀行)に入金していた。このようにして訴外丸山が中部エヌイーシー名義の八十二銀行の口座に入金した金員は、少なくとも一億円を下らない。ところで、訴外丸山がこのような行為に出たのは、同人の中部エヌイーシーに対するいわゆる値差を補填するためであり(「値差」とは、訴外丸山が中部エヌイーシーのノルマを達成するため、中部エヌイーシーの正規の販売店に架空の売上を立てたり、中部エヌイーシーから指示された仕切り値段より安く販売店に販売したため、訴外丸山が中部エヌイーシーに補填せざるを得なかった金員を意味する。)、中部エヌイーシーはその金員を受領する法律上の原因を有しない。  訴外丸山が右のようにしてバッタ屋に販売して得た金員の中には訴外丸山個人の借金の返済に当てた部分もあるが、これとても、訴外丸山はその借入金のすべてを値差を補填するため中部エヌイーシーに入金していたのであり、その借入金の返済に充当された分も、最終的には中部エヌイーシーが法律上の原因なく受領し、利得したものと評価すべきである。 2 控訴人は、平成三年六月から八月にかけて訴外丸山を通じて中部エヌイーシーに販売したパソコンをマイクロパックから一億五三七五万〇八四九円(消費税込み)で仕入れ、右代金を支払ったが、中部エヌイーシーから右と同額の本件売買契約代金の支払いを受けられないため、右同額の損害を被った。控訴人の右損失と中部エヌイーシーの前記一億円を下らない利得との間には因果関係が存在する。 3 そして、中部エヌイーシーは、このように訴外丸山が控訴人から詐取したパソコンを現金化して得た金員により入金を受けるにつき、次のような事情から悪意又は重大な過失があった。  本件において訴外丸山が行っていたような口座流用(中部エヌイーシーの社員が販売成績を上げる等の目的で、販売店と通謀して中部エヌイーシーの本社には正規の注文があったように装い、商品を送らせた上それをバッタ屋に販売する等して値差を生じさせる行為をいう。)は、中部エヌイーシー長野営業所では西山所長が平成三年始めころそのような不正取引を行っていたことが発覚していることからも推察されるように、長年(西山所長時代のみならず前任の小林所長の時代から)営業所ぐるみで行われていたものである。  そこで、かかる値差を埋めるため中部エヌイーシー長野営業所は営業所ぐるみで控訴人からパソコンを騙取してバッタ屋に転売する等の金策に走らざるを得なくなり、平成二年一一月ころから控訴人からパソコンの仕入を始めた。控訴人からのパソコンの購入に当たっては主として訴外丸山が担当したが、パソコンの引取り業務には訴外丸山以外の中部エヌイーシー長野営業所の社員が関与し、同営業所の車両が使用されたこともあった。また、控訴人から入荷された大量のNEC社製パソコンが中部エヌイーシー長野営業所の倉庫に保管され、そのことは複数の中部エヌイーシー長野営業所社員も承知していた。そして、控訴人から購入されたパソコンはバッタ屋に中部エヌイーシー名義で販売され、そのバッタ屋への発送に当たっては訴外丸山以外の中部エヌイーシー長野営業所の社員が関与したこともあった。  以上のほか、訴外丸山の売上高が平成二年九月ころから継続的に一か月二五〇〇万円ないし四〇〇〇万円と異常に高額であったこと、また、訴外丸山が口座借用を行っていた販売店に対する売掛金が端数のない一万円、一〇万円単位のいわゆるきりのよい額が多いなど不自然な事実があったことからみれば、中部エヌイーシーは、訴外丸山が単にバッタ売りを行って値差を生じさせていたのみならず、訴外丸山が控訴人からパソコンを騙取していたこと及びその騙取したパソコンを販売した代金が値差埋めのため中部エヌイーシー名義口座に入金されていたことについて当然知っていたというべきであるし、仮に知らなかったとしても、調査すれば容易に判明する事実であったから、重過失が存在する。 二 控訴人の予備的申立てに関する請求原因(不当利得)に対する被控訴人の認否と反論 1 控訴人の予備的申立てにかかる請求原因(不当利得)の主張は、すべて否認ないし争う。 2 控訴人が主張するような「口座流用」があったとしても、それは販売先と訴外丸山が通謀して正規の注文があったように中部エヌイーシーに装うだけのことで、中部エヌイーシーとしては流用先に対する売上が立ち、中部エヌイーシーからパソコンが注文先の販売店に現実に出荷されることには変わりはない。乙第一五号証(訴外丸山の担当取引店に対する平成三年一月から九月までの売上額と回収額を一覧にしたもの)によれば、問題となっている平成三年三月から八月までの期間の訴外丸山の得意先に対する売上額は約一億五六〇〇万円(消費税を入れると約一億六〇〇〇万円)であり、これに対する入金額は約一億二〇〇〇万円であるところ、現実に右の期間中部エヌイーシーは訴外丸山の担当する販売店に約一億五六〇〇万円相当のパソコンを出荷している。そして、訴外丸山は、本件当時、中部エヌイーシー長野営業所の主任営業担当社員であり、同人の担当業務には職制上も実際上も販売代金を回収し被控訴人に入金する業務も含まれていたから、訴外丸山において販売代金を回収したとして中部エヌイーシーの口座に入金してくれば、中部エヌイーシーとしてはこれを受領することは「法律上の原因」を有することになる。なお、金銭の性質上訴外丸山が中部エヌイーシーの口座に入金する金銭が、そもそも控訴人から購入したパソコンの販売代金かそれ以外のもの(中部エヌイーシーが販売店に出荷したパソコンの販売代金や他からの借入金その他手持ち資金)かは区分できない。 3 しかるところ、中部エヌイーシーは平成三年七月になるまで、訴外丸山が値差を作っていたことや口座を流用して商品を現金問屋に販売していた事実を全く知らなかった。  中部エヌイーシーにおいては、各販売店に対する請求書も本社から直接取引先に送付されるシステムとなっていた。これは商流と物流を分離するとともに販売担当者と販売店との癒着による不正を可及的に減少させるための仕組みであった。しかしながら、販売店が訴外丸山と通謀してしまえば口座流用の事実を察知することは不可能である。本件では販売店から請求書の送付につきクレームが付けられたことはなかったため、中部エヌイーシーとしては訴外丸山の口座流用の事実は全く察知できなかったし、訴外丸山の売掛金回収率はこの間ほぼ一貫して九〇パーセント以上であったこと等よりして、訴外丸山の入金した金銭が正規の注文に基づき中部エヌイーシーが出荷した商品の販売代金以外のものであると窺わせるような事情は皆無であった。また訴外丸山は単にセールスの仕事をしていたのみであり、そのような地位の訴外丸山が大量のパソコンをエヌイーシーの系列以外の控訴人から購入していたと考えられる事情もなかった。 4 以上の次第で、中部エヌイーシーが訴外丸山から金銭を受領するについては、中部エヌイーシーには法律上の原因があり、かつ右受領につき悪意も重過失も存在しない。 第三 証拠書類  原審及び当審訴訟記録中の証拠関係目録記載のとおりであるから、これらを引用する。
           理         由
一 控訴人の売買代金請求及び使用者責任による損害賠償請求について  当裁判所も、控訴人の本件売買代金請求及び使用者責任による損害賠償請求については理由がないと判断する。その理由は、次のとおり付加訂正するほかは、原判決書一七貢五行目から三四貢一〇行目までと同一であるからこれを引用する 1 原判決書二三貢五行目冒頭の「そして、その間、訴外丸山は」から一一行目「入金した。なお、右の」までを次のとおり改める。 「そして、その間、訴外丸山は、現金問屋に販売して得た売買代金については、現金で直接控訴人に支払ったほか、中部エヌイーシーが出荷した商品の販売代金として同社に入金するものもあった。なお、右の控訴人に対する」 2 原判決書二五貢七行目の「仕入れた商品の販売は」から同貢一一行目及び二六貢一行目にかけての「評価するのは相当でない。」までを次のとおり改める。 「控訴人と訴外丸山の取引は平成二年一〇月から平成三年八月までの約一一か月間に及び、その合計取引金額は約三億五〇〇〇万円にものぼる巨額のものであるほか、控訴人との取引の基本的約定ともいうべき支払契約書(甲第一号証)には中部エヌイーシーの社印は押捺されていないものの「中部NEC販売樺キ野営業所丸山正芳」の名称が用いられていること、訴外丸山は控訴人から仕入れたパソコンを現金問屋等に転売して得た代金の一部を中部エヌイーシーの口座に入金していた可能性も否定できないこと等からして、訴外丸山個人としての取引であったとみるよりはむしろ中部エヌイーシーのためにすることを明示して又は暗黙の内に示して取引したとみることが相当である。」 3 原判決書三〇貢八行目の「前掲証拠によれば、」の次に、次のとおり加える。 「吉岡は、昭和五九年及び平成元年に自ら代表者となっているシステム吉岡または株式会社マイクロパックの名において中部エヌイーシーとの取引を行うについては、「取引基本契約書」(乙第一号証)、又は「商品売買基本約定書」(乙第二号証)を交わしているにもかかわらず、」 4 原判決書三二貢三行目の「かなり異常な側面を有しているとみなければならない」の次に、次のとおり加える。 「〔なお、控訴人は当審に至って取引の各月ごとの納品書控(甲第四三号証の一ないし一八)、振替伝票(同第四四号証の一の一ないし一一、同号証の二の一ないし一七)、控訴人の社員小山里江が作成していた元帳(同第四五号証)、総勘定元帳のコンピューター出力票(同第四六号証の一及び二)等の書証を提出し、控訴人においては中部エヌイーシーを宛先として本件の訴外丸山と控訴人との取引にかかる商品の出入りや入出金状況を厳密に管理していた旨主張する。しかしながら、これらが真に訴外丸山との取引の都度厳密に作成され、控訴人において保管していたのであれば、何故原審で書証として提出されなかったのか、その経緯についての控訴人の説明(甲第四二号証、六五号証各陳述書及び証拠説明)はたやすく納得できないのみならず、原審において訴外丸山は納品書はもらっていなかったと証言しており、控訴人代表者も訴外丸山との取引を裏づけるものとしてはノート(甲第三〇号証)が一番のデータである旨明言していることに照らしても、これらの書証の成立や記載内容の信ぴょう性には疑問が残るといわなければならず、これらの書証の存在は前記認定を左右するものではない。〕」 5 原判決書三二貢九行目の次に、行を改めて次のとおり加える。 「なお、控訴人は、本件売買契約に係るコンピュータの注文、引取、受領、代金の支払等については、訴外丸山だけではなく、長野営業所の他の従業員が当たったことがあり、また、商品の搬送(引取)に同営業所の自動車を利用したり、明らかに中部エヌイーシーの商品の梱包と異なる梱包の商品が中部エヌイーシーの倉庫に運び込まれて保管されたこともあった旨主張し、原審証人丸山正芳の証言及び控訴人代表者の尋問結果中には一部右主張にそう部分がある。しかしながら、右証言等はこれを否定する趣旨の原審証人北瀬博文の証言に照らしにわかにそのすべてを措信することは困難であるのみならず、仮にそのような事実があったとしても、前記認定の本件売買に関わる異常な諸事情に対比すれば、控訴人主張の右事実をさほど重視することはできず、控訴人代表者吉岡の認識に関する右認定を左右するには足りないというべきである。」 二 控訴人の予備的申立てに関する請求原因(不当利得)について  控訴人は、訴外丸山は控訴人から仕入れ現金問屋にバッタ売りした代金のうちの約一億円を中部エヌイーシーの口座に販売代金名下に入金したものであるところ、中部エヌイーシーは右一億円を受領するに当たり、右金員が元来訴外丸山において控訴人から騙取したパソコンを現金問屋などに転売して得た代金であり、これを受領する法律上の原因がないことを知りまたは容易に知り得たものであって、悪意の不当利得者に当たるとの主張をする。  しかし、訴外丸山が控訴人から購入したパソコンを現金問屋に転売した代金のうちの一億円が中部エヌイーシーの口座に入金されたとの事実を認めるに足りる的確な証拠はない。  たしかに、乙第一五号ないし第二五号証、第二六号証の一及び二、原審における証人北瀬博文の証言によれば、訴外丸山は平成三年二月二一日から九月二〇日までの期間の売上として約一億六〇〇〇万円(消費税込み)を申告し、同期間に総額約一億六〇〇〇万円の金員を中部エヌイーシーの口座に入金したこと(なお、売上から入金までは約一か月遅れとなるから、平成三年三月から八月までの売上に対応する入金としては約一億二〇〇〇万円となる。)が認められる。そして、甲第二三号証の一には、控訴人から仕入れて販売した代金中約一億円は中部エヌイーシーに入金したがそれは控訴人に入金するべき代金であった旨の訴外丸山の吉岡あての書面の記載があり、証人丸山正芳の原審証言(第八回及び第一二回口頭弁論調書分)中にもあいまいながら同趣旨の供述が見られる。しかし、前記乙号各証及び原審証人北瀬博文の証言によれば、訴外丸山は、右の期間販売店からパソコン等の電機製品の正規の注文をとったものも相当あるし、一方いわゆる口座流用として販売店と結託し、中部エヌイーシー本社には正規の注文が販売店からあったように装い、商品を販売店に出荷させ、それを引き取ったうえ現金問屋にバッタ売りするという手口も多数重ねていたことも認められる。そうすると、訴外丸山が右の期間に中部エヌイーシーに入金した金員については、中部エヌイーシーが販売店に現実に出荷した商品の正規の回収代金も当然あると認めるべきであるし、訴外丸山がいわゆる口座流用として販売店に出荷させ商品を現金問屋をバッタ売りした代金も相当あることが推認されるのであって、訴外丸山から中部エヌイーシーに入金された総額との対比からしても、そのうちの一億円が控訴人から購入したパソコンの現金問屋への転売代金に当たることになる前記甲第二三号証の一及び丸山証言は、にわかに採用することができない。  そして、前認定のとおり、訴外丸山は中部エヌイーシー長野営業所の主任営業担当であって同人には本来的に商品仕入の権限はなく、まして中部エヌイーシーはエヌイーシー製品の長野県北部(北信)を担当区域とする販売取次会社であって、エヌイーシーの系列以外の控訴人のような会社から大量のエヌイーシー製のパソコンを仕入れるということは一般には考え難いことに照らせば、訴外丸山が中部エヌイーシーの口座に振り込んだ金員のうちに一定額の控訴人から購入したパソコンの現金問屋への転売代金が含まれていたとしても、右弁済受領につき中部エヌイーシーの側に悪意又は重過失があったとは直ちにいえないのみならず、これを認めるに足りる証拠もない。  控訴人は、口座流用は中部エヌイーシー長野営業所で長年営業所ぐるみで行われていたこと、訴外丸山の売上高が他の社員の平均的売上高よりも異常に高額であったこと、平成二年一〇月以降の訴外丸山の担当販売店に対する売掛の中には一〇万円あるいは一万円単位のきりのいい、不自然な数字のものが平成二年一〇月以降多数みられたのであるから、中部エヌイーシーは、訴外丸山が控訴人からパソコンを仕入れ、これを現金問屋にバッタ売りしていたことについては早期に知っていたか又は調査等により容易に知り得べき状況にあった旨主張する。しかし、口座流用が中部エヌイーシー長野営業所において営業所ぐるみで行われていたとの事実はこれを認めるに足りる証拠はなく、また、平成二年一〇月以降訴外丸山の売掛の中に控訴人が主張するように一〇万円あるいは一万円単位のものがいくつかみられるとしても、それらは全体からみればごく小数であり、また、訴外丸山の取引が前記認定のように平成三年三月ころから一か月五〇〇〇万円前後に漸次増大してきた事実があるとしても、これらの事実から直ちに中部エヌイーシーにおいて、訴外丸山がこれらの担当販売店と通謀して口座流用を行っていたことを早期に発見し得たとみるのは困難である。  以上によれば、控訴人が主張するように、訴外丸山が中部エヌイーシーの口座に入金した金員のうち一億円は訴外丸山が控訴人から購入したパソコンを現金問屋に転売した代金であると明確に認めることはできず、中部エヌイーシーの口座に入金した金員の中に訴外丸山が控訴人から購入したパソコンを現金問屋に転売して得た金員が含まれているとしてもその額は必ずしも明らかでないのであって、中部エヌイーシーとしては、訴外丸山から入金された金員については出荷した商品の販売代金として受領したものというほかはなく、これを受領すべき法律上の原因がないことにつき悪意又は重過失があったと認めることも到底できない。  そうすると、控訴人の不当利得の主張は採用できないというべきである。 三 以上により、本件控訴は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
  東京高等裁判所第十一民事部
        裁判長裁判官   荒   井   史   男
           裁判官   豊   田   建   夫
  裁判官田村洋三は、転補につき署名捺印できない。
        裁判長裁判官   荒   井   史   男
 
右は正本である。
  平成九年五月二八日
      東京高等裁判所第十一民事部
       裁判所書記官   石  江  貴  雄



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